■二十四節気と七十二候の解説
二十四節気は、太陽の運行を基に暦に季節感を与え、農業の目安として活用されてきました。 人類が狩猟民族から農耕民族へ推移する過程において、生活に必要となる食糧の安定確保のため、二十四節気が考案されました。 七十二候は、二十四節気を三等分したもので、二十四節気の季節感をより詳細に表現したものになります。 太陽の運行を基に成立したものとなるため、季節を感じられる名称や意味合いを持ちます。
▼二十四節気と七十二候の解説
▼目次 暦の解説と暦注の読み方
00.暦の解説と暦注の読み方 |
01.曜日 六曜 九星 十二直の解説 |
02.二十四節気と七十二候の解説 |
03.二十八宿の意味と解釈 |
04.二十七宿の意味と解釈 |
05.選日の意味と解釈 |
06.暦注下段の意味と解釈 |
二十四節気と七十二候
■二十四節気(にじゅうしせっき)とは
二十四節気とは、1太陽年を24等分したものであり、各分割点(日)に季節を表す二十四の名称を付与したものになります。 二十四節気には固定された日数で分割する「平気法」と、太陽の黄道上の視位置(15度毎)で分割する「定気法」があり、現代では主に「定気法」が用いられています。 二十四節気は、太陽の運行を基に暦に季節感を与え、農業の目安として活用されてきました。 当時の為政者達においては、食料の安定確保が課題であり、農業の効率化と安定化のために、暦を体系化させたものが二十四節気の始まりとなります。
1年における二十四節気の基準となるのは、昼が最も短くなる「冬至(黄経270度)」と、昼が最も長くなる「夏至(黄経90度)」との二至となります。 また、昼と夜の長さが同じになる「春分(黄経0度)」と「秋分(黄経180度)」の二分を合わせ、二至二分により1年を四分割するのが基本となります。 この四分割された期間を、更に「立春(黄経315度)」「立夏(黄経45度)」「立秋(黄経135度)」「立冬(黄経225度)」の四立(しりゅう)で分割することにより、二至二分四立の「八節」になります。 この八節をさらに3等分することにより、結果として視黄経15度毎に分割された「二十四節気」が誕生します。 「四立」により、1年が「春夏秋冬」の4つの季節に分けられます。
太陰太陽暦においての二十四節気は、「節気(正節)」と「中気」に分けられ「中気」を基に月の名称が決まり、「中気」の無い月を閏月としています。 「中気」とは、1年を「二至二分」を中心に12等分したものとなり、「節気(正節)」は1年を「四立」を中心に12等分したものとなります。 そのため、中気と節気は交互に配置されます。
節月の考え方は「節気」から「翌節気」までの期間(30日前後)が節月となり、その中間に「中気」にあたる二十四節気が配置されます。 節気を「節入り」としその日を「節入り日」と呼びます。 この節入り日から翌節入り日の前日までが、節月での1ヶ月となります。 また、各月の上旬に巡る二十四節気が「節気(正節)」、各月の下旬に巡る二十四節気が「中気」となります。
二十四節気 | 読み | 太陽黄経 | 時期(新暦) | 節月 | 季節 |
立春 | りっしゅん | 315度 | 2月4日前後 | 1月節 | 春 |
雨水 | うすい | 330度 | 2月18-19日 | 1月中 | 春 |
啓蟄 | けいちつ | 345度 | 3月5-6日 | 2月節 | 春 |
春分 | しゅんぶん | 0度 | 3月20-21日 | 2月中 | 春 |
清明 | せいめい | 15度 | 4月4-5日 | 3月節 | 春 |
穀雨 | こくう | 30度 | 4月20-21日 | 3月中 | 春 |
立夏 | りっか | 45度 | 5月5-6日 | 4月節 | 夏 |
小満 | しょうまん | 60度 | 5月21-22日 | 4月中 | 夏 |
芒種 | ぼうしゅ | 75度 | 6月5-6日 | 5月節 | 夏 |
夏至 | げし | 90度 | 6月21-22日 | 5月中 | 夏 |
小暑 | しょうしょ | 105度 | 7月7-8日 | 6月節 | 夏 |
大暑 | たいしょ | 120度 | 7月22-23日 | 6月中 | 夏 |
立秋 | りっしゅう | 135度 | 8月7-8日 | 7月節 | 秋 |
処暑 | しょしょ | 150度 | 8月23-24日 | 7月中 | 秋 |
白露 | はくろ | 165度 | 9月7-8日 | 8月節 | 秋 |
秋分 | しゅうぶん | 180度 | 9月23-24日 | 8月中 | 秋 |
寒露 | かんろ | 195度 | 10月8-9日 | 9月節 | 秋 |
霜降 | そうこう | 210度 | 10月23-24日 | 9月中 | 秋 |
立冬 | りっとう | 225度 | 11月7-8日 | 10月節 | 冬 |
小雪 | しょうせつ | 240度 | 11月22-23日 | 10月中 | 冬 |
大雪 | たいせつ | 255度 | 12月7-8日 | 11月節 | 冬 |
冬至 | とうじ | 270度 | 12月21-22日 | 11月中 | 冬 |
小寒 | しょうかん | 285度 | 1月5-6日 | 12月節 | 冬 |
大寒 | だいかん | 300度 | 1月20-21日 | 12月中 | 冬 |
■七十二候(しちじゅうにこう)とは
七十二候とは、古代中国で考案された自然界における季節の推移を表現するものとなります。 二十四節気を「初候」「次候」「末候」に等分するため72の候となり、二十四節気の季節感をより詳細に表現したものになります。 二十四節気に関しては、古代中国で発祥した名称を継承しているため、日本では実際に気候と合わない部分もあります。 七十二候に関しては、古代中国で発祥した名称を日本独自の気候に合わせて改訂しているため、より季節を感じられる名称になります。
二十四節気は、古代中国の中原(黄河中下流域にある平原)で発祥し、その名称を現代まで継承しているため、現在の日本の気候とは合わない面もあります。 七十二候は、古代中国で発案された名称を、日本独自の気候に合わせて改訂しているため、現在の日本の気候に合う表現となっています。
節気 | 候 | 七十二候 | 読み | 意味 |
立春 | 初 | 東風解凍 | はるかぜこおりをとく | 東風が厚い氷を解かし始める |
次 | 黄鶯睍睆 | うぐいすなく | 鶯が山里で鳴き始める | |
末 | 魚上氷 | うおこおりをはいずる | 割れた氷の間から魚が飛び出る | |
雨水 | 初 | 土脉潤起 | つちのしょううるおいおこる | 雨が降って土が湿り気を含む |
次 | 霞始靆 | かすみはじめてたなびく | 霞がたなびき始める | |
末 | 草木萠動 | そうもくめばえいずる | 草木が芽吹き始める | |
啓蟄 | 初 | 蟄虫啓戸 | すごもりむしとをひらく | 冬蘢りの虫が出て来る |
次 | 桃始笑 | ももはじめてさく | 桃の花が咲き始める | |
末 | 菜虫化蝶 | なむしちょうとなる | 青虫が羽化して紋白蝶になる | |
春分 | 初 | 雀始巣 | すずめはじめてすくう | 雀が巣を構え始める |
次 | 桜始開 | さくらはじめてひらく | 桜の花が咲き始める | |
末 | 雷乃発声 | かみなりすなわちこえをはっす | 遠くで雷の音がし始める | |
清明 | 初 | 玄鳥至 | つばめきたる | 燕が南からやって来る |
次 | 鴻雁北 | こうがんかえる | 雁が北へ渡って行く | |
末 | 虹始見 | にじはじめてあらわる | 雨の後に虹が出始める | |
穀雨 | 初 | 葭始生 | あしはじめてしょうず | 葦が芽を吹き始める |
次 | 霜止出苗 | しもやみてなえいずる | 霜が終り稲の苗が生長する | |
末 | 牡丹華 | ぼたんはなさく | 牡丹の花が咲く |
節気 | 候 | 七十二候 | 読み | 意味 |
立夏 | 初 | 蛙始鳴 | かわずはじめてなく | 蛙が鳴き始める |
次 | 蚯蚓出 | みみずいずる | 蚯蚓が地上に這出る | |
末 | 竹笋生 | たけのこしょうず | 筍が生えて来る | |
小満 | 初 | 蚕起食桑 | かいこおきてくわをはむ | 蚕が桑を盛んに食べ始める |
次 | 紅花栄 | べにばなさかう | 紅花が盛んに咲く | |
末 | 麦秋至 | むぎのときいたる | 麦が熟し麦秋となる | |
芒種 | 初 | 螳螂生 | かまきりしょうず | 螳螂が生まれ出る |
次 | 腐草為蛍 | かれたるくさほたるとなる | 腐った草が蒸れ蛍になる | |
末 | 梅子黄 | うめのみきなり | 梅の実が黄ばんで熟す | |
夏至 | 初 | 乃東枯 | なつかれくさかるる | 夏枯草が枯れる |
次 | 菖蒲華 | あやめはなさく | あやめの花が咲く | |
末 | 半夏生 | はんげしょうず | 烏柄杓が生える | |
小暑 | 初 | 温風至 | あつかぜいたる | 暖い風が吹いて来る |
次 | 蓮始開 | はすはじめてひらく | 蓮の花が開き始める | |
末 | 鷹乃学習 | たかすなわちたくしゅうす | 鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える | |
大暑 | 初 | 桐始結花 | きりはじめてはなをむすぶ | 桐の実が生り始める |
次 | 土潤溽暑 | つちうるおうてむしあつし | 土が湿って蒸暑くなる | |
末 | 大雨時行 | たいうときどきふる | 時として大雨が降る |
節気 | 候 | 七十二候 | 読み | 意味 |
立秋 | 初 | 涼風至 | すずかぜいたる | 涼しい風が立ち始める |
次 | 寒蝉鳴 | ひぐらしなく | 蜩が鳴き始める | |
末 | 蒙霧升降 | ふかききりまとう | 深い霧が立ち込める | |
処暑 | 初 | 綿柎開 | わたのはなしべひらく | 綿を包む咢が開く |
次 | 天地始粛 | てんちはじめてさむし | ようやく暑さが鎮まる | |
末 | 禾乃登 | こくものすなわちみのる | 稲が実る | |
白露 | 初 | 草露白 | くさのつゆしろし | 草に降りた露が白く光る |
次 | 鶺鴒鳴 | せきれいなく | 鶺鴒が鳴き始める | |
末 | 玄鳥去 | つばめさる | 燕が南へ帰って行く | |
秋分 | 初 | 雷乃収声 | かみなりすなわちこえをおさむ | 雷が鳴り響かなくなる |
次 | 蟄虫坏戸 | むしかくれてとをふさぐ | 虫が土中に掘った穴をふさぐ | |
末 | 水始涸 | みずはじめてかるる | 田畑の水を干し始める | |
寒露 | 初 | 鴻雁来 | こうがんきたる | 雁が飛来し始める |
次 | 菊花開 | きくのはなひらく | 菊の花が咲く | |
末 | 蟋蟀在戸 | きりぎりすとにあり | 蟋蟀が戸の辺りで鳴く | |
霜降 | 初 | 霜始降 | しもはじめてふる | 霜が降り始める |
次 | 霎時施 | こさめときどきふる | 小雨がしとしと降る | |
末 | 楓蔦黄 | もみじつたきばむ | もみじや蔦が黄葉する |
節気 | 候 | 七十二候 | 読み | 意味 |
立冬 | 初 | 山茶始開 | つばきはじめてひらく | 山茶花が咲き始める |
次 | 地始凍 | ちはじめてこおる | 大地が凍り始める | |
末 | 金盞香 | きんせんかさく | 水仙の花が咲く | |
小雪 | 初 | 虹蔵不見 | にじかくいれてみえず | 虹を見かけなくなる |
次 | 朔風払葉 | きたかぜこのはをはらう | 北風が木の葉を払い除ける | |
末 | 橘始黄 | たちばなはじめてきばむ | 橘の葉が黄葉し始める | |
大雪 | 初 | 閉塞成冬 | そらさむくふゆとなる | 天地の気が塞がって冬となる |
次 | 熊蟄穴 | くまあなにこもる | 熊が冬眠のために穴に隠れる | |
末 | 鱖魚群 | さけのうおむらがる | 鮭が群がり川を上る | |
冬至 | 初 | 乃東生 | なつかれくさしょうず | 夏枯草が芽を出す |
次 | 麋角解 | さわしかつのおる | 大鹿が角を落とす | |
末 | 雪下出麦 | ゆきわたりてむぎのびる | 雪の下で麦が芽を出す | |
小寒 | 初 | 芹乃栄 | せりすなわちさかう | 芹がよく生育する |
次 | 水泉動 | しみずあたたかをふくむ | 地中で凍った泉が動き始める | |
末 | 雉始雊 | きじはじめてなく | 雄の雉が鳴き始める | |
大寒 | 初 | 款冬華 | ふきのはなさく | 蕗の薹が蕾を出す |
次 | 水沢腹堅 | さわみずこおりつめる | 沢に氷が厚く張りつめる | |
末 | 鶏始乳 | にわとりはじめてとやにつく | 鶏が卵を産み始める |