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株式会社Royal Fortune > 暦の達人 > 暦の解説 暦注における選日(一粒万倍日など)の意味と解釈

■暦注における選日の意味と解説

選日(撰日)(せんじつ)とは、十干十二支から成る六十干支の組み合わせ等により、その日の吉凶を判断する要素となります。 暦注の中で「六曜 七曜 十二直 二十八宿 九星 暦注下段」以外の総称となり、「雑注(ざっちゅう)」とも呼ばれています。 選日に該当する要素は「一粒万倍日」「不成就日」「八専」「十方暮」「天一天上」「三隣亡」「三伏」「犯土(大土 小土)」「臘日」となります。


▼ 選日の各要素

[一粒万倍日] [不成就日] [八専] [十方暮] [天一天上] [三隣亡] [三伏] [犯土] [臘日]


▼一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)
一粒万倍日とは、何事を始めるにも良い日とされ、特に仕事始め、開店、種まき、お金を出すことに吉であるとされます。 但し、借金をしたり人から物を借りたりすることは苦労の種が万倍になるので凶とされます。 一粒万倍日は数が多いことから、他の暦注と重なる場合があります。 その場合、吉日と重なったら一粒万倍日の効果が倍増し、凶日と重なったら半減するとされています。 一粒万倍日はの撰日法は、節切り(節月)と日支の関係性を基に配置されます。


▼一粒万倍日の撰日法 ※節切りと日支
節月一粒万倍日節月一粒万倍日
子月子日 亥日午月巳日 午日
丑月子日 卯日未月午日 酉日
寅月丑日 午日申月子日 未日
卯月寅日 酉日酉月卯日 申日
辰月子日 卯日戌月午日 酉日
巳月卯日 辰日亥月酉日 戌日

▼不成就日(ふじょうじゅび)
不成就日とは、何事も成就しない日とされ、「結婚 開店 命名 移転 契約 事始め 願い事」などの「事を起こす」と悪い結果を招くとされ凶日となります。 特に結婚や入籍などの慶事や、新規開店などに関しては良くない日とされます。 不成就日は、宣明暦時代には会津暦に記載されただけであり、貞享暦にも記載されていない暦注となります。 民間では根強い人気があり、幕府の許可なく発行されていた民間の暦に記載されていたとされます。

不成就日の撰日法は、月切り(旧暦)が基準となり、8日ごとに繰り返し配置されます。
会津暦(あいづごよみ)とは、江戸時代に会津若松の諏訪神社の神官により作られた地方暦となります。


▼不成就日の撰日法
旧暦不成就日
1月 7月3日 11日 19日 27日
2月 8月2日 10日 18日 26日
3月 9月1日 9日 17日 25日
4月 10月4日 12日 20日 28日
5月 11月5日 13日 21日 29日
6月 12月6日 14日 22日 30日

▼八専(はっせん)
八専とは、日の「干」と「支」の五行が同じとなり、同気が重なることから、「吉はますます吉」「凶はますます凶」とされていました。 現代では凶の性質のみが強調され、「何事も上手く行かない日」とされ凶日の扱いとなります。 日の干支が「壬子」(甲子日から数えて49日目)から「癸亥」(60日目)の12日間に、干支の五行が同じ(専一)となる日が8日あることから「八専」と言われています。 この12日間の間に、干支の五行が重ならない日が4日あり、これを八専の「間日」として八専の影響は受けないとされます。 この期間に干支の五行が専一となる日が8日も集中しているため、特別な期間として考えられ、この期間外の干支の五行が専一となる日(4日)は八専の扱い(影響)は受けません。

八専の期間は、水性が重なる「壬子」から始まり「癸亥」で終わるため、多くの雨が降るとされています。 吉凶共に、象意が強調される(重なる)期間となり、結婚や入籍などの慶事、法事や仏事などの凶事共に忌むとされます。 家屋の建築や植樹などの造作などは吉とされます。 間日には八専の影響は受けないとされます。


▼八専の撰日法 ※日干支
日干支五行間日
壬子49水 水
癸丑50水 土間日
甲寅51木 木
乙卯52木 木
丙辰53火 土間日
丁巳54火 火
戊午55土 火間日
己未56土 土
庚申57金 金
辛酉58金 金
壬戌59水 土間日
癸亥60水 水

▼八専に該当しない日 ※その他
日干支五行
戊辰5土 土
己丑26土 土
戊戌35土 土
丙午43火 火

▼十方暮(じっぽうぐれ)
十方暮とは、日の日の「干」と「支」の五行が相剋の関係となることから、「万事が上手く行かない日」とされ凶日の扱いとなります。 日の干支が「甲申」(甲子日から数えて21日目)から「癸巳」(30日目)の10日間に、干支の五行が相剋の関係となる日が8日も集中しているため、特別な期間として考えられています。 この10日間の事を「十方暮」と言い、「万事が上手く行かない日」「労多くして功の少ない日」とされます。 十方暮のうち、丙戌(23日目)は干支が相生の関係、己丑(26日目)は干支が専一の関係となり、干支が相剋の関係となりませんが、前後の相剋の影響を受けて「間日」とはされません。 十方暮の「十方」とは、「天地」と「八方位」のことで、「八方塞」に「天地」も加わり、まさに「10日間、途方に暮れる」という洒落の利いた意味合いが込められています。


▼十方暮の撰日法 ※日干支
干支五行関係
甲申21木 金金剋木
乙酉22木 金金剋木
丙戌23火 土火生土
丁亥24火 水水剋火
戊子25土 水土剋水
己丑26土 土比和
庚寅27金 木金剋木
辛卯28金 木金剋木
壬辰29水 土土剋水
癸巳30水 火水剋火

▼天一天上(てんいちてんじょう)
天一天上とは、日の干支が「癸巳」(甲子日から数えて30日目)から「戊申」(45日目)までの16日間になります。 この期間には、「天一神」が天上に帰るため、天一神の祟りはなくなり、どこに出掛けても「吉」とされています。 天一天上の期間は、天一神の祟りはなくなりますが、代わりに「日遊神」が家の中に留まるため、家の中を清浄にしなければ日遊神の祟りがあるとされます。 その年の最初の「天一天上 1日目(癸巳日)」を「天一太郎」と呼び「上吉日」とされ、特に結婚などに良いとされていました。 この日(天一太郎)に雨が降ると、その後の天候が悪くなるとされ、この日(天一太郎)の天候から、一年が豊作となるか、凶作となるかを占っていました。

天一神(てんいちじん)とは、方角神の一つで十二天将の主将となります。 「中神(なかがみ)」「天一(てんいち)」「天乙(てんおつ)」「貴人(きじん)」とも呼ばれます。 天一神は天と地との間を往復し、八方を規則的に巡るとされ、天一神のいる方角を犯すと祟りがあるとされていました。 この「天一神」が天上に帰る期間が「天一天上」となります。 平安時代の「物忌みの方違え」は、この天一神を避けるために行なわれていたとされます。

日遊神(にちゆうしん)とは、天一神が天上に帰っている間(天一天上)に代役として地上に降臨する神様となります。 日遊神は火の神とされ、汚れや不浄を嫌い、家の中が汚いとその家に住んでいる人に災いをもたらすとされています。 天一天上の期間は、旅行や出かけることが吉とされ、家の不浄が凶とされます。


▼天一天上の撰日法 ※日干支
日干支日干支
癸巳30辛丑38
甲午31壬寅39
乙未32癸卯40
丙申33甲辰41
丁酉34乙巳42
戊戌35丙午43
己亥36丁未44
庚子37戊申45

▼三隣亡(さんりんぼう)
三隣亡とは、この日に建築に関することを行うと「三軒隣まで亡ぼす」とされ、棟上げや土起こしなど建築に関することは一切忌むべき凶日とされていました。 現代でも、一部の建築業界では棟上げなど建築に関することの凶日として考えられ、建築関係の行為は避けられることがあります。 三隣亡の由来は不明であり、元々は吉日であった「三輪宝」から、凶日である「三隣亡」に書き改められたとされる事もあります。 江戸時代の暦の編集者が書き間違えた節もありますが、その真偽は不明となります。 三隣亡の撰日法は、節切り(節月)が基準となり、日の十二支との関係で配置されます。

追記、上記の説のほかに、「簠簋内伝」内に記載されているとの説もあります。 三隣亡は、鎌倉末期から室町初期に陰陽道に深いかかわりがあるものが記したとされる「三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集(簠簋内伝)」内に記載されているとされます。 簠簋内伝・第四巻(風水や建築関係の内容)にて「七箇の悪日」の一つとして三隣亡日が登場します。 この当時から三隣亡は、火の災いを司る日とされ、この日に造屋を行うと三軒隣まで焼き滅ぶとされています。 撰日法も、建築関係者の悪日とされていたのも含め、現代まで続く「三隣亡」と同じ内容のものとなります。


▼三隣亡の撰日法 ※節月と日支
節月三隣亡
子 卯 午 酉月寅日
丑 辰 未 戌月午日
寅 巳 申 亥月亥日

▼三伏(さんぷく)
三伏とは、「初伏(しょふく)」「中伏(ちゅうふく)」「末伏(まっぷく)」の総称となり、「種蒔き 療養 遠行 旅行 男女の和合 婚姻」などは、全て慎むべき日とされています。 陰陽五行説において「庚(陽金)」は火に剋されることから、火性が最も盛んになる「夏季の庚日」は凶日とされています。 夏季の中でも最も暑くなる時期に巡る「三回の庚日」を「初伏 中伏 末伏」の「三伏」としています。 この三伏の日取りに関しては、暦により異なることがあります。

ここでは、「夏至以後」の「3回目の庚日を初伏」「4回目の庚日を中伏」、「立秋以後」の「最初の庚日を末伏」としています。 いずれも酷暑の頃となる7月中旬から8月上旬となり、現代でも「三伏の候」「三伏の猛暑」と、酷暑の時節であることを手紙の前文に書くことがあります。


▼三伏の撰日法 ※諸説あり
三伏該当日
初伏夏至以後の3回目の庚日
中伏夏至以後の4回目の庚日
末伏立秋以後の最初の庚日

▼犯土(つち ぼんど)
犯土期間には、土を司る土公神(どくじん)が土中にいるため、「穴掘り 井戸掘り 種蒔き 土木工事 伐採」など「土を動かす事は全て慎むべき」とされます。 土を犯すと土公神の怒りに触れ、祟りがあるとされています。 土公神とは、陰陽道における神様にあたり土を司るとされています。 また、仏教における「堅牢地神」と同体とされることや「普賢菩薩」を本地とするとされます。

犯土期間とは、「庚午日(甲子から7日目)」から「丙子日(13日目)」までの7日間が「大犯土(おおづち)」となり、 「戊寅日(15日目)」から「甲申日(21日目)」までの7日間が「小犯土(こづち)」となります。 中間点となる「丁丑日(14番目)」は「犯土間日(つちまび)」「中犯土(なかづち)」として、犯土の影響は受けないとされます。 犯土期間は土用期間と同じように、特に地鎮祭等の建築儀礼には凶日とされています。


▼犯土の撰日法 ※日干支
大犯土小犯土
庚午07戊寅15
辛未08己卯16
壬申09庚辰17
癸酉10辛巳18
甲戌11壬午19
乙亥12癸未20
丙子13甲申21

▼臘日(ろうにち ろうじつ)
臘日とは、本来は中国の「臘祭」という行事であり、一年の末に神と祖先を一緒に祀るという祭礼となります。 臘祭は、一年の最後の日に、猟をして捕えた獣の肉を祭壇に供え、神様とご先祖様をお祀りしていたとされます。 臘日の撰日法は「丑月9日」「小寒後の2度目の辰日」「大寒に最も近い辰日」「大寒後の最初の戌日」などがあり、採用していない暦もあります。 ここでは、「小寒後の2度目の辰日」を「臘日」としています。

臘日は、五行の水気が最も極まる冬季(丑月の中旬)に、水気を剋する土気が最も旺じる日(丑月辰日)となり、神事や婚礼などは凶日になるとされています。 旧暦では、旧年から新年に変わり行く時節となり、新年を迎えるにあたり禊を行っていたとされます。


▼臘日の撰日法
撰日法
1.丑月9日
2.小寒後の2度目の辰日
3.大寒に最も近い辰日
4.大寒後の最初の戌日